
初めての夜泣きは衝撃がすごかったのを覚えているよ。
いつまで続くんだろうかと不安だよね。

最初の1ヶ月は特に記憶がないくらい大変だったわね。
― HPが削られ続ける、終わりの見えない戦い ―
はじまりは、静かな夜だった。
子どもが生まれて数日。
その夜は、驚くほど静かだった。
「……あれ?
育児って、意外といける?」
ベッドの上で、そんな甘い考えが頭をよぎった。
今思えば、あれは最初で最後の油断だった。
時計は深夜2時。
世界が眠りについた頃――
クエストは突然、始まった。
夜泣きの始まり、そして夜泣きモンスターの出現

「ふぇ……ふぇぇ……」
「ふぇ……ふぇぇ……」
最初は小さな声だった。
しかし、それは確実にこちらのHPを削ってくる。
抱き上げる。
少し揺らす。
背中をトントンする。
……泣き止まない。
むしろ、
レベルが上がった?
というくらい、声量が増していく。

「ウエー、ぎゃわああー」
「え、どうすればいいんだ……?完全に覚醒している。」
攻略本はない。
セーブもできない。
逃げ場もない。
夜泣きという名のクエストは、
強制参加型だった。
何をしても正解が分からない
ミルク?
→ いや、さっき飲んだ。
オムツ?
→確認したが、問題なし。
抱っこ?
→ 既にしている。
それでも泣く。
理由が分からない。
原因が見えない。
ゴールも分からない。
勇者の頭に浮かんだのは、
**「自分がダメなんじゃないか」**という疑念だった。
「こんなに泣かせてしまっている」
「ちゃんとできていない」
「親として失格なんじゃないか」
夜泣きは、
体力だけじゃなく、心のHPも削ってくる。
3時間おきの授乳という縛りプレイ
ようやく泣き止んだと思ったのも束の間。
時計を見ると、
「次の授乳まで、あと2時間半」。
横になっても、眠れない。
「どうせまた起きる」
そう思うと、
脳が休息モードに入らない。
そして、きっちり3時間後――
再び、夜泣きモンスター出現。
このクエスト、
連戦仕様だった。
朝が来ても、回復しない
夜が明ける。
カーテンの隙間から光が差し込む。
……なのに、HPは回復していない。
むしろ、
デバフがかかったまま。
- 集中力低下
- 思考力ダウン
- 感情コントロール不能
「これで仕事…?」
「今日一日、持つのか…?」
育児と仕事を両立する勇者にとって、
夜泣きは次の日にも影響する長期戦だった。
それでも、逃げられない理由
正直、つらかった。
何度も思った。
「誰か代わってほしい」
「一晩だけでいいから寝たい」
でも、腕の中の小さな体は、
ただ必死に生きているだけだった。
言葉も使えない。助けも呼べない。
泣くことしか、できない。
その事実に気づいたとき、
このクエストの意味が、少しだけ見えた。
夜泣きは「敵」じゃなかった
ある夜、ふと冷静になった瞬間があった。
「この子、この世界に来てまだ数週間なんだよな」
大人の世界は、音も光も温度も、全部が刺激だ。
そりゃ、不安にもなる。
泣くのは、生きるためのサイン。
夜泣きは、倒すべきモンスターじゃなくて、一緒に乗り越えるイベントだった。
その後、勇者と女神は話合いをし、深夜の対応は女神が、朝方の対応は勇者が行うことにした。
夜泣きクエストで得たもの
今でも、夜泣きはある。
正直、楽ではない。
でも、あの最初の夜を越えたことで、勇者は一つレベルアップした。
- 「泣いても大丈夫」と思えるようになった
- 完璧を目指さなくなった
- 自分を責めすぎなくなった
夜泣きは、勇者を鍛える修行だったのかもしれない。
女神の助言

夜泣きは、いつか必ず終わります。
でも、あなたが頑張った夜は、消えません。
今日も生き延びたなら、それで十分です。


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